12月総会
- 日時:12月11日 (日曜日) 14時から
- 場所:早稲田大学 西早稲田キャンパス
- 発表者:M さん (東京大学 3年)
- Title:「ホモトピー論入門」
- Abstract:ホモトピーとは、空間(簡単のため位相空間としましょう)やその写像を連続的に変形することを考えるために導入された概念です。これを用いると、空間にはホモトピー同値(連続的に変形して移りあう)という同値関係が定まり、ホモトピー同値で不変な量を考えられるようになります。 この代表的なものとしてホモロジーやコホモロジー、基本群やその拡張であるホモトピー群などが挙げられます。ホモロジーやコホモロジーは定義はやや複雑ですが、計算しやすく、発見から現代数学の主要な道具となるまでにはあまり時間がかかりませんでした。 一方、ホモトピー群のようなホモトピー集合(ある空間から別の空間への(基点を保つ)写像をホモトピーによる同値関係で割ったもの)は非常に計算が難しく、例えば球面のホモトピー群ですら完全に決定することは困難を極めます。しかし、ホモトピー群はその素朴さゆえに多くの情報を残しており、その決定はトポロジーにおける重要な問題と位置づけられています。 コホモロジーはEilenberg, Steenrodによる公理的記述を経て一般コホモロジーと呼ばれるものに拡張されましたが、実はこれはホモトピー圏(ホモトピー集合を射の集合とする圏)において表現可能函手(ある対象へのホモトピー集合を与える函手)として書かれることが知られており、これを表現する対象を束ねて(プレ)スペクトラムというものが考えられます。このようにしてコホモロジーもホモトピーを通じて捉えられるのですが、スペクトラムにはそれ以外の側面もあります。 空間に対し、円周からの写像のなす空間をループ空間といい、無限にこの操作を繰り返したものと同値な空間を無限ループ空間といいます。そして、スペクトラムは一般コホモロジー理論だけでなく無限ループ空間とも対応することが分かります。ここで驚くべきことに、無限ループ空間はアーベル群の拡張(∞版)ととらえることができ、このつながりによってスペクトラムというものが代数的な構造をもとに定義される対象(スキームなど)に内在するホモトピー論を導入するための素材たり得ることが分かるのです。これはホモトピー論が高次の代数構造(∞圏など)を記述する基本言語であることの一例となっており、近年幾何的な計算手法とは別に大きく発展してきています。 以上のようにまだあまり話すことがまとまっていませんが、ホモトピー論および圏論を骨格と僕の趣味に絞り広く浅く解説し、その後ループ空間と代数構造、スペクトラム、スペクトラル代数幾何等の近年のホモトピー論の応用の流れについて(僕自身詳しいことはあまり知らないので)噂話をして新年へのモチベーションアップにつなげられればよいと思っています。圏の言葉や特異ホモロジーなどについて多少知っていると聞きやすいと思いますが、必要なことは簡単に解説するつもりです。